「シッコ」は日本人に受けるか!?
医療問題話題作との前評判の高かったマイケル・ムーア監督「シッコ」は、もしかすると日本人にソッポを向かれてしまったかもしれません。
封切り初日の8月25日(土)、満を持して川崎にあるチネチッタに早速出かけました。さぞや長蛇の行列かと思いきや窓口も劇場もガラガラで、拍子抜けでした。定員532名の比較的大きな画面があるシネ8でしたが、上映5分前になっても閑古鳥が鳴いていました。
封切り日のみでは興行の行方は判断できませんが、内容は、米国の医療制度の見直しを提案するもので、日本人からすれば「何を今さら」といった感が否めません。「医療関係者は絶対に、絶対に、観てください!」とのキャッチフレーズはアメリカ人に向けたものであり、日本人向けではないようです。
健康保険とは何か? 医療とは何か? 国民の幸せとは何か? を問う話題作との前評判でしたが、アメリカの医療制度を単に紹介した内容で、目新しいものは何もありません。
アメリカで国民皆保険が普及しない理由は簡単です。
1.相互扶助の精神がない
開拓精神に基を発するアメリカ人は、まず個ありきで他人は二の次。「何故私が他人の面倒をみなきゃならないの?」と大多数の人が思っています。銃社会であるアメリカは、深層心理としてわが身は自分で守るという意識が高い国民性です。
2.金持ちと貧困層の格差が大きい
富める者は、豪邸に住み、豪華な晩餐を食し、最新鋭で高度な医療を受け、家族に囲まれ幸せな日々を過ごす。これこそアメリカンドリームで、アメリカ人が好んで使う言葉です。多民族国家であるアメリカでは、ヒーローが話題になります。貧困から富を得た人だけが味わう征服感こそ彼らの原点です。この意識は、中産階級が多い言われる日本人にはわかりません。
3.現行医療制度で、ほとんどのアメリカ人は不都合を感じていない
お金持ちはフルインシュランスを選び、最高度の医療サービスを得ています。また米国では大手企業に就職すれば、会社が保険に加入、家族を含めて病気や事故などの際手厚い保障が受けられます。社員の医療保険の高騰が企業経営に重くのしかかっているといわれる所以です。この格差を是とするか否とするかは国民が選択することです。
4.アメリカの私的保険はビジネスそのもの
保険内容が細分化されればされる程、サービス内容に制約が加わります。日本の自動車保険でも現在はサービスが細分化し、どのサービスを選択するかは被保険者の自由です。事故が起きた時に、救急車利用の許可が必要・指定した医療機関でなければサービスが受けられないなど様々な問題提起? がなされていますが、保険の内容は全て保険金額で決まります。保険もビジネスであることを念頭に入れるべきです。
5.国民皆保険の国が社会主義国家と思っている国民
ヨーロッパ・フランス・ドイツなど多少の差があっても国民皆保険制度です。「皆保険=相互扶助=社会主義」と誤解しているアメリカ人が多いのではないでしょうか。ムーア監督には日本の皆保険制度を取材して欲しかったと思います。
他国は例はそれはそれとして、日本の皆保険制度は大きな曲がり角にきています。年々膨らむ医療費に、国はその抑制策を取ろうと躍起です。財政が安定しない限り皆保険制度を維持できません。シッコを他山の石として、日本のよき国民皆保険制度を継続して欲しいとつくづく感じさせられる思いでした。
(記者:宮本 聰)
